お客様事例05
太陽誘電株式会社
地元密着のものづくりも大切にしながら、経営戦略や市場の変化に合わせて物流動線を最適化。倉庫の分散化とともに、コストとCO2排出量の削減に貢献
太陽誘電株式会社様は、電子部品をグローバルで製造販売するメーカーです。スマートフォンなどの情報通信機器や自動車、産業機器など、さまざまな業界を支えています。アルプス物流とは、集荷配送をきっかけにして40年間以上お取引いただき、1997年からは同社のヘッドクオーター機能を有する群馬県高崎にてロジスティクスセンター業務を全面受託させていただきました。主力製品であるセラミックコンデンサーの需要が国内外でますます高まっている中、太陽誘電様は2025年に向けた増産体制を見据えた物流の最適化を検討し始めていました。
選定前の課題
01
BCP(事業継続計画)の観点から高崎のロジスティクスセンターに一極集中している在庫運用を懸念していた
02
海外工場で製造した輸入生産品の比率が増加。航空輸入製品を国内の空港から高崎のロジスティクスセンターまで転送する物流動線の効率化を検証していた
03
2025年の増産体制におけるマーケットのグローバル化への強化を図る上で、有効性の高い在庫運用を模索していた
選定理由
01
製品在庫の航空輸入品の割合を検証し、約40%の納入先が首都圏であることを把握。国内生産品の倉庫は高崎、海外生産品の倉庫は成田での2拠点運用を提案
02
2拠点運用により大幅な増床にも対応可能に。増産体制を見据えた在庫運用はもちろん、分散化によるBCP対策にも大きな効果を期待
03
太陽誘電のERPシステムとのEDI連携をはじめ、アルプス物流独自の倉庫システムを高崎で既に導入済み。システムの移植やカスタム対応など、成田営業所においても独自性を踏まえたスムーズな移管立上げを確約
04
成田で倉庫システムのバージョンアップに成功。高崎の倉庫システムへ逆展開し、2拠点内での倉庫作業のさらなる効率化に貢献
背景
地域貢献に配慮しながら物流動線を最適化
太陽誘電株式会社様は、主力製品であるセラミックコンデンサーの需要拡大に対応するため、2025年を目標に増産体制の強化を計画されていました。同社のセラミックコンデンサーは、群馬県内の高崎を中心とした工場で生産され、世界有数のシェアを誇る製品です。業界の最先端を走り続ける一方で、地元群馬県高崎市への地域貢献も大切にされています。この計画の一環として、アルプス物流は高崎倉庫のスペース拡張を相談されました。長年のお取引実績がある私たちは、従来の高崎倉庫の役割を重視しつつ、各生産拠点からの入庫データや納入先の分布を詳細に分析。2つの重要なポイントに着目し、最適なソリューションを提案しました。
一つは、 生産拠点別のストックポイントの分散です。国内と海外の生産工場でストックポイントを分ける運用を提案しました。国内生産品は引き続き高崎倉庫で管理し、海外生産品は空港近くの成田倉庫に移管。これにより、海外製品の輸入横持輸送のリードタイムと輸送距離を大幅に短縮しました。同時に、CO2排出量削減にも寄与。また、大幅な増産体制によるスペース拡張にも迅速に対応できる設計となっています。
次のポイントは、 アルプス物流独自の倉庫管理システム「ACCS」の活用です。高崎倉庫と成田倉庫の双方で導入いただきました。グローバル共通WMSであり、加えて太陽誘電様特有の製品特性や納入仕様に合わせたカスタムメニューにも幅広く対応。同じシステムを使用することで、成田倉庫の立ち上げ時にも、現場研修や人材トレーニングを効率的に実施。必要最低限の人員と短期間で現場の垂直立ち上げを実現しました。さらに、稼働後のフォローアップも最小限の負荷で対応可能となり、安定した運用を支えています。
会社も製品も生産地も納入先も異なる
複雑な物流機能に対応するマザー倉庫
成田営業所を加え、効率重視の分散運用へ。
グローバル共通WMSであるACCSを軸に負荷なく移管
解決策➀
効率と柔軟性を高め、環境負荷を軽減する物流動線
当初、太陽誘電様からのご相談は、高崎営業所の保管スペース拡張でした。しかし、私たちはスペースの拡張にとどまらず、成田営業所を活用した2拠点での分散運用を提案しました。この背景には、物流動線の詳細を調査・分析した結果、効率化の可能性を発見したことがあります。
太陽誘電様の在庫運用は、群馬県の工場が中心の国内生産品だけでなく、海外工場からAIR輸送で届く製品も高崎営業所に集約して保管する形でした。調査の結果、2つの重要なポイントが明らかになりました。一つは、国内生産品の多くが成田地区のフォワーダーを経由して海外へ発送されていること。もう一つは、海外生産品が全量国内向けで、その約40%が東京・千葉・神奈川、特に千葉県内の配送先に集中していること。だからこそ、国内生産品は高崎営業所で保管し輸出品として成田地区へ発送し、海外生産品は輸入地近くの成田営業所で保管・配送する運用を提案しました。
この運用により、高崎への輸送が不要になり、輸送コストとリードタイムを削減。さらに、成田営業所からの配送で、緊急時の同日出荷対応も可能になりました。また、輸送距離短縮によるCO2排出量削減も実現し、効率化と環境負荷軽減を両立しています。
海外生産品の入庫と出庫を重視して再構築
解決策➁
スムーズな倉庫移管を実現した、アルプス物流のノウハウ
遠隔地での倉庫分散運用は、通常、トラブルがつきものです。運用安定まで数ヵ月かかるケースも少なくありません。しかし、太陽誘電様の高崎倉庫から成田倉庫への移管は、驚くほど円滑に進みました。その鍵となったのは、アルプス物流のグローバル共通情報システム「ACCS」の存在です。
長年に渡り、高崎営業所では太陽誘電様の基幹システムと「ACCS」をEDI連携して運用しています。同じシステムを成田営業所にも採用することで、既存の運用をそのまま移植可能に。ラベルや出荷指示書の作成など、太陽誘電様に特化したカスタムメニューもすべて引き継ぎました。在庫データもコピーして成田営業所に移管し、従来の運用を一切変えることなくスムーズな立ち上げを実現しました。
さらに、高崎営業所での経験を活かした現場研修やトレーニングにより、必要な人員や準備期間を最小限に抑えました。立ち上げ後のフォローアップ支援も同様に効率的に実施し、人員と時間を最適化することでローリスクかつ迅速な「垂直立ち上げ」を達成。スムーズな倉庫移管は、私たちが太陽誘電様と共に築き上げてきたノウハウの結晶とも言えます。
2つの安心で、遠隔地への分散もローリスクで実現
解決策➂
移管をきっかけに開発した「新たな自働化」
太陽誘電様の成田倉庫は、高崎倉庫を移管しただけではありません。私たちメーカー系物流企業ならではの視点で「新たな自働化」を実現しています。
太陽誘電様では、ミスの防止を徹底する文化が根付いています。たとえば、電子部品のリール梱包では、人がスキャナを使い、ロットNoが記載された複数のラベルを貼付。その後、すべてのラベルを機械やハンディターミナルで読み取ることでミスを防いでいました。しかし、これにはどうしても時間がかかるという課題がありました。さらに成田倉庫への移管後、ハンディターミナルによるスキャン作業を画像認識技術による一括スキャンに切り替え、ハンズフリー化することで作業工数を大幅に削減しました。この技術は現在、高崎倉庫にも逆輸入され、効率化に貢献しています。
さらに、アルプス物流の成田営業所は2025年4月から最新マテハン技術を導入したカートン自動倉庫へと進化。スペースの有効活用と省人化を両立し、太陽誘電様の増産体制に柔軟に対応できる体制を整えています。
成田から高崎へ、合理化策を逆提案
カートン自動倉庫へと生まれ変わるアルプス物流の成田営業所

お客様の声
太陽誘電株式会社

ロジスティクス部門
ご担当者様
倉庫の分散運用に留まらない、
さらなる解決策の提示を評価
当社とアルプス物流は、40年以上に渡り、お付き合いしています。高崎倉庫のスペース拡張について相談した際、成田倉庫での分散運用という提案には正直驚きました。これまでもコストや手間・人員、CO2排出量などの削減を重視してきましたが、当社の物流動線を細かく分析いただき、成田を拠点とする経済合理性を具体的に示されたことで、新たな視点が得られました。
また、独自開発いただいた「ラベル貼付機」についても非常に満足しています。当社製品はお客様ごとに異なる物流加工が必要で、倉庫作業の複雑化や作業工数の増加は避けられないからこそ、分散運用を契機に大きな改善に取り組めたことを高く評価しています。