環境

TCFD提言に基づく情報開示

気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)

アルプス物流グループでは、気候変動といった将来の不確実性に対処することは、持続的な企業価値向上ならびに持続可能な社会の実現に資するものであると考え、全社で環境課題に取り組んでいます。当社グループは2023年9月にTCFDへの賛同を表明しました。取り組みを一層進めていくとともに、TCFDの開示推奨項目に沿って情報開示に努めていきます。

ガバナンス

当社グループは、取締役会の直下にサステナビリティ推進委員会を設置し、同委員会においてサステナビリティに関わる活動方針を決定し、気候変動関連課題を含む主要なESG課題について協議・検討を行っています。サステナビリティ推進委員会の委員長は、ESG担当役員が務め、年に2回委員会を開催しています。サステナビリティ推進委員会は、主要なESG課題に沿って設定した3つのワーキンググループ(E:環境WG、S:社会WG、G:ガバナンスWG)で構成されていますが、外部・内部環境の変化に伴って今後適宜見直しを行っていきます。気候変動課題については、サステナビリティ推進委員会が決定した活動方針に従い、各WGで具体的な取り組みを実施し、重要度に応じて取締役会に諮る体制を取っています。サステナビリティ推進委員会において審議・検討した、E:環境、S:社会、G:ガバナンスに関する重要事項や活動実績などは、年2回取締役会に報告しています。

戦 略

-気候関連のリスクと機会の特定-

当社グループでは、気候変動関連のリスクと機会は、中長期にわたり事業活動に影響を与えると認識しています。当社グループにとっての重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクや機会を特定するため、1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオの複数の将来シナリオを想定し、当社グループを取り巻く外部環境の変化やさまざまな状況下において、重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクと機会の洗い出しを行いました。気候関連のリスクと機会の評価に際しては、当社グループの全てのセグメント(電子部品物流セグメント、商品販売セグメント、消費物流セグメント)を対象としています。なお、今後も引き続き当社グループの外部環境の変化等に応じて、適宜重要なリスクと機会の評価の見直しを行い、戦略に反映させていきます。

-シナリオ分析の前提-

シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオ(1.5℃~2℃および4℃)を参考にしました。

  • 1.5℃~2℃の世界では、温室効果ガス削減のための規制が強化され、低・脱炭素化が進むことに伴う事業への影響、移行リスクが高まることが考えられます。
  • 4℃の世界では、規制などの移行リスクのレベルを超越した物理リスクが、異常気象により高まることが考えられます。

-リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響-

1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオを前提として、当社の主要事業に重要な財務影響を与えるリスクと機会を分析し、リスク低減に向けた対応策と、機会活用に向けた対応策を検討しました。

-リスク・機会に対する戦略(移行計画)、レジリエンス-

シナリオ分析を実施し、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクと機会を特定し、適切な施策を講じることで、当社グループのレジリエンス(対応力)が高まるように今後、中長期的な視点から経営戦略に反映させていきます。

リスク・機会一覧
リスク/機会 分類 リスク/機会項目 発現時期 影響 リスク軽減/機会活用に向けた対策
リスク 移行 (政策・法的リスク)炭素税の導入 中期
  • EV化の開発に応じたEV車両の導入
  • 再生可能エネルギーへの転換
  • 積載率改善による車両効率の向上
  • 自動車のEV化に関する開発状況の情報収集
(技術リスク)低排出技術に移行するためのコストの増加 長期
(評判リスク)気候変動への対策ならびに情報開示が不十分なことにより、企業評価が低下するリスク評判低下に伴い資本調達コストが増加するリスク 中期
物理的(急性リスク) 台風、豪雨、落雷などの異常気象の激甚化(河川の洪水、土砂災害など) 中期
  • 災害発生時における危機管理本部の設置体制
  • 詳細な危機管理フローの整備
  • 倉庫の自然災害対策として、土嚢、盛り土、高床(地面から1m)、キュービクルの屋上設置を実施
  • 災害の状況に臨機応変に対応するための迂回ルートの確保
物理的(慢性リスク) 海面上昇(沿岸部に位置する拠点における対策費用や保険料が増加) 長期
  • 沿岸部に配置された拠点を把握し、海面上昇のリスクを把握
  • 急性リスク同様の対策による電源確保、継続通電可能な再生エネルギー導入検討
  • 代替輸送ルートの確保
気温上昇による労働環境の悪化により、人材確保が困難となるリスク 長期
  • 空調設備の整備による適切な労働環境の確保
機会 資産効率 物流の効率化 短期~中期
  • 海外を中心としたモーダルシフトを国内にも展開することを検討
  • 効率的な輸送網の構築や積載率の向上(例:段積み輸送)
  • 共同保管・共同集配など他社との連携
リユース・リサイクル 短期~中期
  • 資源の有効活用、リサイクル(再資源化)の推進による廃棄物の削減
業務プロセスの革新・効率化(DX等) 短期~中期
  • 電子部品物流プラットフォームを用いた共同保管
  • 共同集配の拡充などによる効率的な倉庫管理や配送
  • 梱包設計変更による積載効率向上
  • 省力化、省電力化のマテハン機器の導入
  • AIを活用した配送ルート最適化などによる走行距離の削減や燃費向上
高効率設備の導入の推進による、電力使用の低減・費用削減 中期
  • 倉庫屋上への太陽光発電設備導入の推進
  • LED化
エネルギー源 より低排出のエネルギー源の使用 中期
  • 太陽光発電設備の設置などによる、再生可能エネルギーの導入
新技術の使用 短期~中期
  • 電動式大型ラックの使用
  • EV化の開発に応じたEV車両の導入
炭素市場への参入 短期~中期
  • カーボンオフセットなどの総合的なCO2削減による投資家からの評価の向上
製品とサービス 低炭素社会に向けた収益機会 短期~中期
  • 共同保管・共同集配
  • 積載効率向上
  • 省力、省電力のマテハン機器
  • 国内での長距離、多頻度を中心とした貸切輸送におけるモーダルシフトの導入を検討
  • 輸出入におけるモーダルシフト
レジリエンス 防災対策の強化による事業安定化 中期
  • 土嚢、盛り土、高床、キュービクルの屋上設置等による防災対策
  • 迂回ルートや輸配送手段の分散
  • 予め予測できる自然災害時(台風・大雪)における計画的な運休(事前案内)、各拠点BCP対応の実施
エネルギー効率化措置の採択による燃料コストの削減 中期
  • 最適な輸送ルートの設定
  • トラック1台あたりの積載率向上
資源の代替/多様化による電力調達コストの削減 中期
  • 太陽光発電設備の設置などによる、再生可能エネルギーの導入

※短期:3年以内 中期:3~10年 長期:10~30年 小:1億円以内 中:1億円~5億円 大:5億円超

リスク管理

当社グループでは、経営企画部門および人事総務部門が主管となり、全社的なリスク情報を把握し、管理する体制の構築・整備に取り組んでいます。

気候変動関連リスクに関しては、サステナビリティ推進委員会、経営企画部および品質環境部が中心となり、気候変動関連のリスクと機会を特定し、リスクを軽減するための対策、取り組みを各事業所や関係部署と共働して対策を検討・実行し、進捗状況を管理するとともに、経営層への報告、提言を行う体制を敷いていきます。

また、リスクの重要度に応じて、サステナビリティ推進委員会がリスク管理状況を取締役会に報告、取締役会においてリスクマネジメントプロセスの有効性を監督するという体制を敷き、全社で気候変動関連リスクの管理に取り組んでいきます。

指標と目標

マテリアリティである「事業を通じた環境負荷軽減の取り組み」を実践するため、当社グループは、輸送事業用車両等によるCO2排出量(Scope 1)および電力使用によるCO2排出量※1(Scope 2)を重要な指標と捉え、削減を目指しています。それぞれの実績値および目標は以下のとおりです。2022年度のCO2排出量は、物流キャパシティ増強により、2021年度と比較して総量は約1.7%の増加となりましたが、原単位では着実に削減しております。

なお、Scope 3については、2024年度の開示に向けて検討を進めています。