人材戦略の基本的な考え方
アルプス物流は、企業理念である「豊かな社会の実現」「新たな価値の創造」「従業員の尊重」に基づき、「顧客ニーズと市場動向に迅速に対応した提案ができるスキル・能力を持った人材」の育成を目指しています。最適物流を支える保管・運送・輸出入・包装設計・商品販売等の機能をつなげた総合物流サービス(グローバルワンチャンネルサービス)を担うプロフェッショナルな人材の成果発揮の機会と場を提供できる組織と環境を整えます。
中期的な人材戦略のテーマとして、「人的資本への投資と生き生きと仕事に取り組める環境づくりと働きかけ」を掲げています。経営戦略に紐づいた人材戦略を推進することで、人材戦略を取り巻く事業環境が大きく変化している状況において、当社が求める「自ら考え、自ら判断し、自ら行動(挑戦)する」人材の充実に努めます。また、従業員一人ひとりのキャリア形成と多様な働き方をサポートすることで、自律したプロフェッショナルと変化に対応できる人材になることを促し、相互に尊重し、支援し合う環境を整えます。また、人材の価値を最大限引き出すべく、従業員満足度の向上と組織の活性化を通じて、当社グループの持続的成長・価値向上を実現していきます。
人的資本への投資
人材の確保・採用と育成に関わる方針
当社グループは、「お客様ごとのニーズに応じた最適物流の追求」を実現するため、求める人材像として「自ら考え、自ら判断し、自ら行動(挑戦)する人材」を掲げています。積極性、行動力のある人材を確保するため、多様性を重視した採用を積極的に行う方針です。
また、当社グループの人材育成の方針を、「顧客ニーズと市場動向に迅速に対応した提案ができるスキル・能力を持った人材の育成」とし、お客様が抱える物流に関する課題を解決すべく、物流現場のさまざまなシーンにおいて自ら考え、自ら判断し、自ら行動と提案ができる深い専門知識と幅広い見地をもった人材の育成に努めています。
人材確保・育成に向けた課題と取り組み
物流業界では自働化や省人化が加速していますが、物流サービスの根幹を担うのは将来も「人」であり続けると考えています。また、少子化などの影響もあり、物流業界全体での人材不足は根源的な課題であると認識しています。当社グループでは、人材確保・育成の方向性として、採用活動だけでなく既存の従業員の能力強化と質的向上による生産性の向上、付加価値の増大が重要であると考えます。今後の事業拡大や領域拡大を見据え、テクノロジーの変化に伴うスキルアップも不可欠です。
当社グループはこうした課題に向け、多様な働き方を可能にし、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が集まり、能力を発揮できる企業を目指します。
物流プロフェッショナル育成のための教育体系
複数の物流サービスを組み合わせ、サプライチェーンの最適化を提案する当社グループにとって、総合物流のプロフェッショナルの育成は注力すべきポイントの一つです。そのため、社内研修プログラムを時代、環境に即したものに内容を進化させてきました。
総合職採用の新入社員は、約5カ月間、運送・保管・輸出入貨物取扱の各部門での実習を通じ、総合物流の基礎を習得します。当社の強みの一つである倉庫管理システム(ACCS)の開発の基礎を学び、倉庫現場に着任後のベース作りを行います。また、お客様の視点に立った提案ができるよう、グループ会社における約1カ月の電子部品の製造実習も研修プログラムに取り入れています。営業職や管理職などの経験者採用による社員も、複数の部門での実習を通じて物流現場を知り、その後の業務に役立てています。
配属後は、①階層別(必須・推薦)、②公募選抜型、③公募自由型と3つの参加形式による研修プログラム体系を整備・運用しており、従業員の積極的な参加を促すサポートを行っています。
教育体系図概要
技術的側面に関しては、OJT、OFF-JTの両面で各事業の従業員教育を実施し、総合物流のプロフェッショナルへつながるよう計画的に育成を行っています。社員制度である役割等級制度に基づき、等級ごとの役割、必要となる能力・知識・経験についてまとめた「スキルマップ」を育成に役立てています。
保管事業においては、倉庫管理システム(ACCS)の階層別研修のほか、TIEの考え方を定着させるため、「IE分析基礎研修」を実施しています。加えてリーダー層の従業員に対しては、職場においてTIE改善の実践ができるよう「IE分析技術者養成研修」を行い、2023年度は同技術者を約20%増加する計画です。
運送、輸出入貨物取り扱い、包装の各事業においても階層別の研修プログラムを策定し、各事業におけるプロフェッショナルの育成を行っています。
グローバル人材の育成
当社ネットワークの一層のグローバル化や変化の激しい事業環境を背景に、人材育成体系を整備し、グローバルな視点で自ら考え、行動し、周囲を巻き込んで新たな価値を生み出す人材育成を目指しています。
具体的には、若手から中堅社員を対象とし、海外勤務に必要な考え方や国内でも活用できる基礎スキル、専門スキルなどをさまざまな角度から学ぶAGC(ALPS Global Candidate)プログラムを実施しています。加えて、海外事業の現場体験、現地の語学・文化・習慣等の理解を目的とした海外トレーニー制度、海外拠点長育成のためのAGCアドバンスプログラムを実施しています。近年の中堅、若手の海外赴任者は、その全員がAGCプログラムの受講生です。
教育投資
当社では人事部門および各事業部門が連携し、教育施策を実施しており、「能力開発基本調査(厚労省)」の基準に準じた教育投資額をKPIの一つとしています。2022年度の教育投資は一人あたり2万4千円でした。今後も継続してモニタリングを行うとともに、拡大を計画しています。
生き生きと仕事に取り組める環境づくり
職場環境整備に関する方針
当社グループでは、国籍、人種、年齢、性別、思想・信条に関わらず多様な人材を採用する方針に基づき、多様な価値観を持つ人材がその能力を最大限に発揮できる人材の配置と職場づくりに努めています。多様な人材が働きやすい職場環境を整備することで、従業員エンゲージメントの向上と組織の活性化を推進します。
職場環境整備に向けた課題と取り組み
当社グループでは、制度的な枠組みは現在も整備を進めていますが、新たな枠組みや取り組みが有効に機能し、企業の持続的成長に貢献するためには、従業員一人ひとりのエンゲージメントの向上が重要だと考え、満足度向上に向けた活動を開始しています。さらに、従業員のキャリアやライフスタイルの多様化を踏まえながら、学びたいという姿勢や自発的なチャレンジを支援する施策を充実させていきます。また、時代の変化に即した新たな企業風土を確立することを目的に「カルチャー変革推進組織」を立ち上げて取り組みを開始しました。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組み
当社では、国籍、人種、年齢、性別、思想・信条に関わらず多様な人材を採用する考えに基づき、地域ごとに、その能力を最大限に発揮できる人材の配置と職場づくりに努めています。多様な価値観、職歴、働き方をベースに当社サービス領域の拡大に活かすことで経営理念を実現します。
人材の多様性において、当社および主要子会社の女性管理職比率が低いことを今後の対応課題と認識しています。女性の管理職登用を促進するためには、まずその一つ手前の職位における女性社員を増やすことが重要と考え、以下の取り組みを強化しています。
ワークライフバランスの充実を課題として捉え、性別に関係なく全社員が働きやすい制度面の充実と、多様な価値観を受け入れる組織風土の醸成を進め、社員が継続的に能力を発揮できる環境整備に取り組みます。
また、非管理職の女性リーダー層を対象に女性リーダー研修、その1年後にフォローアップとして、女性社員が自らのキャリア形成について考える機会提供を行っています。
(女性リーダー研修:2016年より開講/受講者数延べ63名)
(女性リーダーフォロー研修:2017年より開講/受講者数延べ58名)
課長職・係長職に占める女性の割合
対象 | 2022年度実績 | 2023年度目標 | 2024年度目標 | |
---|---|---|---|---|
女性管理職比率(課長) | 正社員 | 1.4% | 3.1% | 4.7% |
同 (係長) | 正社員 | 10.8% | 12.0% | 17.0% |
当社では、経験者採用で入社した社員が、多く活躍しています。今後も経験者採用を積極的に行い、採用形態や入社年次にとらわれず、一人ひとりがさまざまな環境で培った経験、キャリアを最大限発揮できる機会を提供していきます。
そのほか、インクルージョンの観点から、国内複数の拠点で公的機関と連携し、障がいを持つ方への雇用機会を拡大しています。
女性活躍推進法に基づく行動計画
アルプス物流では女性がより活躍できる社内環境を整備するため、次の通り行動計画を策定しました。
【期間】
2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間
【目標】
- 管理職(課長職以上)及び係長職の女性比率を現状以上とする
(2023年3月31日現在は女性管理職比率:2.8%、女性係長比率:10.8%) - 総労働時間の短縮と年休取得の推進
【行動計画】
- 女性を対象としたキャリアアップ研修の定期実施
(随時実施)
- 非正社員から正社員への転換
- 育児、介護等を理由とする退職者の再雇用
ワークライフバランス充実に向けた取り組み
当社では、従業員のキャリアやライフスタイルの多様化を踏まえ、勤務地条件を選定できるコース別人事制度を導入しています。グローバルに活躍する「グローバルコース」、国内を活躍範囲とする「ナショナルコース」、転居を伴う異動がない「エリアコース」の3つのコースがあります。コース選択によらず管理職として活躍することができる仕組みを設けています。
各種法令に基づいた休業制度や短時間勤務制度により育児・介護と仕事との両立を支援し、育児や介護を理由とした離職防止に努めています。間接部門や一部の部門においては、在宅勤務制度を導入し、従業員個人の状況に合わせた柔軟な運用を行っています。性別を問わず仕事と家庭の両立を支援するため、男性の育児休業の取得も推進しています。対象者向け制度説明会を実施し、2022年度は男性の育児休業取得率は22.2%でした。
労働時間の削減
当社では2016年から働き方改革の一環として時間外の削減および年休取得率の向上による総労働時間の削減に取り組んでいます。2019年4月からは、一般従業員の36協定の上限時間を従来の1ヶ月100時間から80時間に引き下げました。また、年休取得率の目標を70%と設定し、役職に関わらず積極的な年休取得を促しています。時間外労働が多い月が継続する部門については、適正人員化を図っています。
2024年度に施行されるドライバーの労働時間の上限時間設定、いわゆる「2024年問題」に先立ち、当社は労働時間の管理基準を設け、運行ルートの再設定、付帯業務の削減等に取り組んでいます。その結果、既定の上限時間を下回る労働時間まで削減を達成しています。
総労働時間
2022年度実績 | 2024年度目標 | |
---|---|---|
総労働時間 (管理職を除く正社員) |
2,077時間 | 2,042時間 |
従業員エンゲージメント向上に向けた取り組み
満足度調査
当社では従業員エンゲージメント向上を図るため、2021年度より全社で満足度に関する従業員アンケートを毎年1回実施しています。初年度の2021年度は全社および各拠点の調査結果に基づき労使で意見交換を行い具体的改善施策を推進しました。2022年度は前年度の取り組み施策に対するアンケートにより、満足度の向上度合いと、今後の進むべき方向性の確認を行いました。前年同様、アンケート結果に基づき労使間での意見交換、具体的改善施策を実行しています。2023年度には、改善施策の定着を図るとともに、今後の定期調査の実施に向けた仕組みの見直しと、エンゲージメント向上に向けた取り組みを推進しています。
また、海外拠点においても従業員の満足度調査を行っており、2022年度は中国・韓国・ドイツの計7拠点にて実施しました。2023年度も継続して実施するほか、新たにアセアン・中国の未実施拠点にて実施を予定しています。
対象 | 単位 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | |
---|---|---|---|---|---|
総従業員数 | 全社員 | 人 | 1,696 | 1,728 | 1,797 |
男性 | 全社員 | 人 | 833 | 847 | 926 |
女性 | 全社員 | 人 | 863 | 881 | 871 |
女性管理職比率(課長)※1 | 正社員 | % | 1.6 | 1.4 | 2.8 |
同 (係長)※1 | 正社員 | % | 5.4 | 10.8 | 10.8 |
障がい者雇用率 | 全社員 | % | 2.36 | 2.87 | 2.83 |
定年再雇用率 | 正社員 | % | 100 | 100 | 100 |
経験者採用者率※2 | 正社員 | % | 30.8 | 50.0 | 55.7 |
育児休業取得率(男性) | 全社員 | % | 5.6 | 22.2 | 23.1 |
同 (女性) | 全社員 | % | 76.5 | 95.5 | 73.7 |
育児休業からの復職率 | 全社員 | % | 100 | 100 | 92 |
介護休業取得者数 | 全社員 | 人 | 0 | 3 | 1 |
男女間賃金差異 | 全社員 | % | 58.2 | 57.4 | 58.5 |
総労働時間 | 正社員※3 | 時間 | 2,088 | 2,077 | 2,046 |
年休取得率※4 | 全社員 | % | 89.2 | 81.2 | — |
離職率 | 正社員 | % | 4.9 | 5.3 | 5.2 |
※2 年間の新入社員に占める経験者採用者の割合
※3 管理者を除く
※4 年次有給休暇に関する対象期間は、10月1日~翌年9月30日としています。
人権尊重
人権方針
当社は、「人権の尊重」は人類共通の不可欠な価値観であり、当社の事業活動が人権に対して影響を及ぼす可能性があることを認識しています。当社は「アルプス物流倫理規範」において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、「OECD多国籍企業行動指針」などの国際規範に従い、人権を尊重する責任を果たすため、従業員がどのように行動するかを明文化しています。
当社は、当社で働く人たちの基本的な権利を守り、人種、性別、年齢、国籍、思想・信条による差別を行いません。強制的な労働、児童労働、各種ハラスメント等を一切排除します。
日本および進出している世界の各地域で、従業員が健康で充実した会社生活を送り、成長する機会を享受できるよう、環境の整備に努めます。
「アルプス物流倫理規範」はウェブサイト上で公開しており、常時閲覧可能です。
人権尊重の浸透・定着に向けた取り組み
全従業員を対象として「アルプス物流倫理規範」の教育を年1回継続的に行っており、2022年度の教育の受講率は、休職者を除き100%でした(アルプス物流単独)。
苦情処理メカニズム
当社では、人権問題などに関する従業員からの苦情や通報を受け付けるため、業務ラインから独立した窓口として「倫理ホットライン」を国内外の各社に設置しています。通報者の保護を確保したうえで厳正な調査に基づき必要な救済や処分を行っています。
サプライチェーンにおける人権課題への取り組み
人権の尊重は、自社内に限らず、サプライチェーンにおいても重要課題と認識し取り組みを進めています。「アルプス物流グループパートナー会社行動ガイドライン」のなかで、人権に関わるガイドラインを定めており、取引先にその遵守を求めるとともに、セルフアセスメントを実施し、その遵守状況を確認しています。